映画評 『トゥルーマン・ショー』

総合評価
★★★★★

ハイ、おめでとうございます。初の満点獲得作品でございます。
こちらの作品、どうやらジャンルはコメディーに分類されているようですが、はっきり言ってコメディーではありません。(どーん!!)
よくよく考えると、あえてコメディーに分類することで、この作品の持つシニカルさがより一層増すのではないかとも思いますが・・・。
まぁ、「笑い」を期待している人にはオススメしません。
ですが、フツーに見ても十分面白いし、エンディングも爽快な気分になれえるので老若男女誰でも楽しめます。
そして何と言っても、この作品はメッセージ性が強く、現代社会を風刺した作品として色々考えさせられるものがあります。

そもそも、僕がこの作品に出会ったのも、高校のとき、どこぞの模試の現代文の問題に、この『トゥルーマン・ショー』が題材として取り上げられていたからでした。
残念ながら、それがどこの予備校の模試で、その評論文の著者は誰なのか覚えていませんが、なかなか強烈な内容だったことは覚えています。
だから今回この作品を見て、その時の記憶と今の感動とが、一本の線となって結びつきました。

メディアによって作られた虚構の島で生活する、トゥルーマン。
島自体が大きなセットとなっていて、そこには約5000台ものカメラが取り付けられ、日々トゥルーマンの行動をとらえながら、その様子を全世界に生中継している。
もちろん、トゥルーマン以外の「ドラマ」の登場人物は皆グルになっていてトゥルーマンだけを貶めている。

何と言っても感動するのが、ラストシーン!
自分の身の周りの異変に気づき始めて一人ボートで島を抜け出そうとする。
しかし海の沖合の何もない場所でボートの先端が突然何かに「ブスッ」っと突き刺さる。
それは紛れもなく、巨大セットの壁。
動揺を隠せないトゥルーマンは、急いでボートの先端に駆け寄り、ゆっくり壁に手を添える。
この瞬間、トゥルーマンは全てを悟る。
ヤバい、ココ涙モノ。

でもさ、これって現実にも十分あり得る話だから怖いよね。
考えてみてよ。
生まれてこの方、何もない平凡な生活をしてきたのに、実は知らぬ間に自分が「ドラマ」の主人公だったとしたら・・・。ひぇ~!
いやいや、あり得るんだよ?
誰がどこで見てるかなんてわからないじゃん。
現にイギリスのロンドンとかでは、監視カメラの数が多すぎて問題になってるじゃん。

あとここで出てくる問題が、過剰なメディアの報道。
今の時代、ホンッと多いよね!
フライデーとか見てるとイライラするし、テレビ番組でも芸能人の私生活を過剰に公開したりしてさ。
やだねぇ~。

「トゥルーマン・ショー」のドラマの中では、トゥルーマンの周りで使われている商品がそのままテレビ画面を通して広告となる。
トゥルーマンは普通に生活を送っているだけなのに、いつの間にか宣伝広告として利用され、世界中に放送される。
金儲けの為ならどんな手も使う、現代の腐敗しきったメディアの現状をチクリと刺している。

そして何よりデカいのが、人間の自由という倫理的な問題だ。
トゥルーマンは自分の意思によらず、勝手にこの島に連れ込まれ(というか、この島で生を受けた)、知らず知らずのうちに行動範囲を制限されていた。
島から出ようとするトゥルーマンに、局は最終手段として彼を殺そうともした。
これは決してあってはならないことだ。

最後に皆に考えてほしいことがある。

君たちは知らず知らずのうちに社会という大きな檻の中に閉じ込められ、自由を制限されてはいないだろうか。
そしていつの間にか、その私生活を何者かに監視されてはいないだろうか。
君たちは知らず知らずのうちにメディアにうまくコントロールされ、歩く広告塔として利用されてはいないだろうか。
トゥルーマンは安全な虚構世界を捨て、危険な現実世界に足を踏み入れる決意をしたが、君たちにはその冒険心と、真実と向き合う勇気を持っているだろうか。

どうでもよいが、最近、海外に出たがらない若者が多いらしい。
日本は確かに安心安全で、何一つ不自由することはないが(震災・原発事故が起こった今、最も危険で電力不足の不便な国となってしまったが・・・汗)、一歩海外に踏み出し色々な真実を自分の目で見てくることはいいことだと思う。
僕も金がたまったら、いつか世界に飛び出すつもりだ。

さらにどうでもよいが、この『トゥルーマン・ショー』を見て、Perfumeの「エレクトロ・ワールド」の歌詞の世界が何度も頭をよぎるのは、果たして僕だけであろうか・・・。


------------------------------------------------------

トゥルーマン・ショーThe Truman Show)』
1998年作品
上映時間103分
監督:ピーター・ウィアー
脚本:アンドリュー・二コル

コメント

このブログの人気の投稿

oasis 「Fuckin in the Bushes」という曲の重要性

約十年ぶりに『もののけ姫』を観て感じたこと

イヤホン族