映画評 『七人の侍』

総合評価
★★★★★

この間、伯父に会って久しぶりにあれこれ話をしていると、話題が映画の話になった。
せっかくの機会だったので、伯父に
「本当に感動する映画を探してるんだけど、何かいい映画知らない?」
と訊いてみた。
すると伯父はこう答えた
「キミが感動するかどうかは分からないけど、あれは一度は必ず見ておいたほうがいいよ」
それで薦められたのが、この『七人の侍』。
あまりにも有名どころだったのでびっくりしたが、伯父が薦めるものにハズレは少ないので、とりあえず、というか早速、近所のレンタルショップでDVDを借り、見ることにした。

感想。
正直ビビった。
黒澤明、は有名だし、この作品も有名。
僕も前々からいつかこの作品を見ようとは思っていたのだが、「白黒だからつまらなそう」、「昔の作品だからつまんなそう」、と変な固定概念を抱いていた。
が、しかし、この作品を見た後、そんな固定概念は粉々にぶっ壊れていた。
僕は世界の黒澤をなめていた。なめっきていたのだ。

やはり凄い。
まずオープニングからぶっ飛んでいる。
ドンドコドンドコ腹に轟く威勢のいい和太鼓をBGMに、黒地に白の筆で書かれたキャスト名が並ぶ。
一見すると古臭いのだが、ここまで来ると一回りしてむしろカッコよい、と感じてしまう。
オープニングが終わると荒々しい馬と武士の映像からストーリーが始まるのだが、その馬の迫力ったら、もう・・・。
フツー、白黒だと映像の美しさとか迫力とかが半減しちゃうと思うでしょ?
違うんだな。
ハッキリ言って、カラーより迫力あるし、カラーより人間の表情とかが引き立つ。
白黒だからこそ魅力が倍増する画っていうのもあるし、白黒でしか表せない表現っていうのもあるのだよ、ワトソン君。

ストーリーは単純なんだけどね、ついつい黒澤ワールドに引き込まれちゃうのさ。
だから、この本編207分もあるけど、全然長いとは感じなかったな。

役者の演技も相当上手いよね。いや、そりゃプロなんだから当たり前なんだけどさ。
一つ一つの細かい表情にもブレがないというか。
特にさ、久蔵が敵から火縄銃を2丁とってきて、それを見た勝四郎が久蔵をべた褒めするシーン。
あのときの久蔵の表情の変化とか上手いな思った。
こっちもついつい微笑んじゃう、あんな表情されたら(照
志乃もすごい魅力的だったな。
白黒だけどもの凄い美人に見えたし、あぁヤラれた・・・って心から思った。

キャラの設定も上手い。
登場人物がやたらいっぱい出てくるけど、それでも混乱しないのは、一人一人のキャラ設定がしっかりしていて、それを監督・役者が徹底して貫き通しているからだろう。
ホントに人物一人一人の個性がはっきりしていて見ていて楽しい。

最後の戦いのシーンは見ものだ。
僕なんて、見ながらずーっと武者震いw
心臓もバクバク。
七人の侍たちの戦い方っていうのがみんな違うんだけど、みんなカッコいいの!
侍魂みたいのを魅せつけられて、あぁ日本人で良かった、と心から思える。
一番カッコいいのが、ラストシーンでつぶやく勘兵衛の言葉。
戦に勝ったにも関わらず、また負けてしまったな、とポツリ。
戦に勝ったのは俺たち侍ではなく百姓だ、だって。
カッコよすぎでしょ、こんなん!

とにかく、いろんな面でホントに刺激になった。
この作品がその後の世界中の映画にかなりの影響を与えてるっていうのも納得。
日本が世界に誇れる作品ですよ。
50年前の作品だというからなお驚き。
人生に一度は見ておくべき。
そしてこれを薦めてくれた伯父に感謝。

あ、見るときは字幕も付けたほうがいいよ、DVDならついてるから。
字幕がないと、方言とか昔の言葉遣いとか多いからちょっと聞き取りづらいかも。


※米映画『荒野の七人(The Magnificent Seven)』は『七人の侍』のリメイク作としてあまりにも有名。英バンドThe Clashの曲「The Magnificent Seven」も元をたどれば黒澤明の影響ってことになるの?
※他にも海外の著名な映画監督が黒澤明の影響を受けたと公言しており、なんでもあのスティーブン・スピルバーグは作品の制作に息づまると原点に戻るという意味で『七人の侍』を見るそうだ。


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七人の侍
1954年作品
上映時間207分
監督・脚本:黒澤明

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